クラウンラガー【Crown Lager】というビールをご存知でしょうか。
オーストラリア、CARLTON社のラガービールです。
このビールを知ったのは、10年以上前、オーストラリアに住んでいた20代の頃でした。
当時日本では発泡酒すら出始めでしたがきちんとしたビールはまだ高く、また日本で住んでいた四国地方は輸入物のお酒もバラエティに乏しく、オーストラリアのビールの安さに喜んでいました。
VBとか、フォーエックス(XXXX)とか、350mlくらいでも冷えた瓶ビールが一般的で。
しかしやはり味をたしなむというより”量”で楽しませる存在だからか、アメリカのバドワイザーのように、軽い味わいや口当たりが主流。
そういう意味で、”XXXX Bitter”などの方が味わいにコクのあるので好きでしたね。
そんな中、「ちょっとお高いこんなビール知ってる?」と教えてもらったのがCrown Lagerです。
このビールは、当時2ドル前後だったビールの中で4ドル以上もする、いわばエビスのような存在でした。
瓶も、野暮ったさを感じさせるような、いっぱい入ってますよ感がうれしい太めの他のビールと異なり、ピンヒールにドレスコートを着たレディのように、エレガントなデザイン。
一目惚れさせるようなたたずまいでした。
Crown Lagerの気になる味は、クリームのような小さな小さな泡が舌から喉まで通っていく、やはり上品な味わい。
ラガーというだけあってしっかり苦みは感じさせるのにえぐみがない。
きんきんに冷やすというよりも、喉に通りやすいくらいの優しい冷たさが丁度いい。
ラベルに描かれている王冠にふさわしい、まさに王様のようなビールでした。
存在感や味が気に入って、「ちょっと高いんだけどな〜」といいながらもよく買っていました。
たしか昔のエビスのように、どこででも買える代物ではなかった気がします。
むしろ他のビールも買いつつこのCrown Lagerも飲むと、群を抜いたプレミアム感があっていい気持ちになれました。
帰国の際は何本も買って帰った記憶があります。
そんなCrown Lagerを、近くのイオンのリニューアルした専門酒売場で偶然みかけました。
久しぶりの出会いにときめく一方、あのCrown Lager殿がこんなイオンなんかに置かれていて…と一言申したくなりましたが家族内で処理しておき、一本だけ買って帰りました。
あの頃とまったく変わらない、金色のラベルに描かれた流れる筆記体のロゴとあの赤い王冠のマーク。
こんなに細かったんだな、と感じたのは自分が成長したからでしょうか。
さっそく冷やしてみて飲んでみると、忘れかけていた味に感動しました。
シャンパンのような微炭酸が、オーストラリアに住んでいた頃のいろんな記憶や感覚が持ち上がらせます。
味覚、もちろん他の飲み物や食べ物も、記憶や思い出とリンクしているものですが、お酒って何か違いますね。
そこに横たわる時間の流れを、より感じさせる気がします。