台風とかぶるなというか、もうまさに最接近通過中の最中、予定通り決行された「CSS Nite in Okinawa vol.5」へ参加してきました。
こちらは3年ぶりのCSS Niteということでさぞかし猛者が集まるのだろうと思っていましたが、この台風のせいか、事前の予想に沿って少数と見積もってか、那覇市IT創造館の一室でコンパクトに行なわれました。
とはいえプログラムの質は非常に濃いもので、この天候の中参加した甲斐があるといえるもの。
クオリティでいえば、ここ何回か参加したイベントの中ではもっとも実益にかなう内容でした。
セッション1:「キーノート:HTML5が拓く未来 〜HTML5との正しいつきあい方〜」/羽田野 太巳さん
現在のHTML5の状況をおさらいし、今後、HTML5をはじめとしたWebテクノロジーが世の中にどのような影響を与えていくのかが考察されました。
ウェブ制作という市場の規模を、他の業界と比べてみたことはなかった。実際目の前の案件を片付けていくことに目を向けていると、明後日の方向から見つめたり、ずっと高い位置から先行きを見ることなどありませんでした。実際、このマーケットはさほど大きくならないばかりか、単価の下落をたどる一方。対応するデバイスは増え、対処するブラウザは増え、そしてウェブの仕組みもどんどん新しいものに。
でもそう窮屈な業界ではなくて、どんどんいろんな業界に絡んでいけるんだという視野を広げてくれる、俯瞰することの大切さを学べる、セミナーの先鋒としては十分納得のお話でした。
セッション2「HTML5マークアップの基本」/益子貴寛さん
イイ意味でHTMLオタク、いや権威といっていいような貫禄が言葉の端々に踊っている、技術屋として聞いていて楽しいスピーカーでした。こちらではHTML5のマークアップの基礎のおさらいとなりました。
マークアップする方にとっては当たり前の情報も多かったとはいえ、実際案件がまわってきたとき、HTML5でやってしまっていいのかどうなのか、そこまで高機能じゃないんだから無難なXHTMLで、となりがちではあるのですが、HTML5でぜひやってください!」とはっきり言ってもらったのが、参加して良かった点の一つ。
検索順位最適化でなく検索結果画面の最適化!
HTML5の役割をざっくりいうと、みてもらうため、そして使ってもらうため。
興味深かった点が、HTML5で組んでいくと、検索結果画面の最適化となるという話です。
もしHTML5でマイクロデータに対応させると、Googleの検索結果のスニペットをリッチにすることができ、検索結果を見た人が「このページを見てみたい」と惹き付ける要因となります。
ぜひぜひHTML5を積極的に提案して使っていきたいと思いました。
セッション3:「マルチデバイス対応とCSS3、レスポンシブWebデザイン」/鷹野 雅弘さん
さて真打ち登場というか、いつも非常に興味深く濃い話を語ってくださる鷹野さん。
中でも考えさせられたのは、レスポンシブデザインについての一考。
Googleも推奨ということで沸いているレスポンシブWebデザインですが、「スマホ対応」であって、「スマホ最適化でない」こと、また、スマホ最適化は、スマホが使われる場面、使う人などを考慮して、PCとは異なるコンテンツを提供してもいいのではないか?という提案とその事例が紹介されました。
やはり基本というか、技術的に可能だから導入するのではなくて、「使う人にとってどうなのか」という観点が大切ということですね。
Androidの画面サイズは断片化を続けており、海外の端末で数えるとなんと約4,000!それぞれごとに対応させることなど到底無理。
日本の機種も、そしてiPhoneでさえも、今後さらに多様化することは目に見えていて、既存のサイトを最適化させるのもいたちごっこ。
そうなると、結局レスポンシブってなんなのよ、という話に帰結します。
やはりスマフォでも見られるようにして、という話になった場合、モバイルファーストでの制作を分かりやすく提案できるようにありたいと感じました。
セッション4:「スマートデバイス(HTML5+CSS3)時代に考えるWebサービスのあり方」/中川 直樹さん
手書きベースのスライドで惹き付けていく、中川さんの話。
もしかしたらこの話が一番熱かったかもしれない。
時代とともに、人の消費、行動決定のプロセスがどのように変化したか、という話。
人々の価値観は如何に変わったかをじっくりと考察できました。
モノではなく、「コト」を売るへの変化
昔はタレントが良いといっているから、といったことで物は売れていましたが変化しています。
たとえばザク豆腐。こんなのあり得ない、というものでも、単に身体のためやメニューのために豆腐を買うという消費ではなくて、ザク豆腐をみんなで囲んで鍋をしたり、話題にしたり、といったその商品を通して生まれる楽しみ方のために消費が発生したムーブメントがあります。
というか、そうした消費者の動向を察知して、こういったリーダーが流れを作っているのでしょう。
しかしこうした動向を、流れを作っていく上で、ウェブ、とくにiPhoneという、たったひとつのデバイスの登場だけで、消費の行動、購買にいたるまでのプロセスも変わってきているということです。そしてウェブ屋こそ、そうした時代の変遷に合わせて敏感になっていなければいけないんだ、ということを認識させられました。
セッション5:『HTML5とマイクロソフト』/春日井 良隆さん
いまやヒール役が似合ってきたマイクロソフト、だけどマイクロソフトの中の人からウェブ業界を見ると実際どうなの、という点が大変興味深い話でした。
実はApple製品使ってるんだよ、というジャブから入り、こういったデバイス面白いよね、という観測から、マイクロソフトが取り組んでいる事柄にいつの間にか引き込まれ、おお、マイクロソフトやっぱすげえ、と満足して終了しました。
IEのシェアが5%を切ると社内で何かお祝いを企画中だそうで。先ほどIE6 Countdownを見てみたら見事4.9%と5%を切っていました!おめでとう!ウェブ屋の皆さん!そしてマイクロソフト!
まとめ:参加して良かった
会場を見渡しても、前回、前々回と比べてみんな相応に年齢を加えていって、30〜40代が多く見える。
フォローアップメールのアンケートを見ても、その年代が6割を超えていました。
メインホストの鷹野さんや益子さんもさすがエネルギッシュだけど、最初に見たときから6年ほど立つということは、それだけのご年齢なんだろうなあということ。
他の地域でのセミナーを重ねてきて、一番効果あるセミナーとなるよう内容を練られるのだろうけど、20代にウェブ発展期を過ごし、そしてシゴトとしてウェブを選んだ参加した人たちが、生活を支えながら業界をそれなりに支え、ちゃんと自信もって仕事を続けていけるようなものとなっていると感じました。
実際のテクニカルなものだけでなく、実際にコーディングやデザインをする業界人の今後どうやって食べていくのかといった展望や、いまやっているシゴトをただの作業で終わらせるのではなくて、もっとできることがあるんだ、と実感させられました。
今後もこういったセミナーを活用していきたいと思っています。