COLUMN/

四国でのロードバイク文化は発展するのか?「愛媛マルゴト自転車道」

昨日のニュースに地元愛媛について、そして僕の趣味である自転車に関連したニュースが届きました。

MS、愛媛県をサイクリング天国に、自転車乗りのための地図・投稿サイト構築(Impress Watch)
愛媛県と日本マイクロソフト株式会社は22日、「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を公開した。県内のサイクリングロードのルートを地図サービス上で紹介するほか、コースごとの高低図や走行動画、グルメ・観光スポット情報も提供する。また、実際に現地を訪れたサイクリストや県民から写真や情報の投稿も受け付け、地図上から検索できるようにしていく。 愛媛県では、県内全域を“サイクリングパラダイス”にすべく、「愛媛マルゴト自転車道」という事業を推進中。その一環として、同県と日本マイクロソフトが連携してサービスサイトを開発した。

計26コースも設定って愛媛ってそんなに自転車文化すすんでいたのか・・
どうやら愛媛マルゴト自転車道サイトを見ると、結構本腰入れて自治体としてサイクル文化を整えようとしている模様。
とくにしまなみ海道周辺は、ウェブで見る限りでは盛り上がろうとしているように見えます。

愛媛マルゴト自転車道 おすすめコースを見たらその南予地方も入っていて、中上級者コースは100km前後、高低差も800mはあろうかという地形も入っています。
確かに遊子半島の眺めはきれいだけど、なかなかのヒルクライムだぞ。楽しいけど。
住んでたのはもう何年も前ですが、愛媛で育って、そして自転車文化の根付く土地に今住む者としてこのプロジェクトの気になることをまとめてみました。

愛媛にロードバイク文化を根付かせたい、たった一つの理由

わたしが以前住んでいたところは愛媛県の南部、宇和島市。
たまに帰省したとしても、ロードバイクにしろサイクリングにしろほとんどみかけない。
友人たちの間でもまずいない。
そんなに関心がないのではないかとニュースを聞いた第一印象です。

“自転車”は普通に根付いています。通勤通学はみんな使っています。
けれどただの移動手段です。
地域環境のせいか、ちょっとした趣味やアクティビティへの時間やお金の使い方、過ごし方の温度差が現実として存在します。

そりゃ、野球だとか有名。部活動もそれなりにやってる。

宇和島のパチンコ屋

けど実際のところ余暇を何に使うかといえば、パチンコ。買い物。ネット。DVD。カラオケ。
映画だって車で松山までいかないといけない。
ちょっとした観光スポットができればドライブ。焼肉。エミフル。こんなところです。

泳げる海だとか、楽しめるスキースノボコースだとか、遊園地だとか、ちょっと遠いからおのずと機会もモチベーションも限られてくる。

もちろんみんながみんなじゃないのは認めます。価値観や状況は様々です。
けれど、時間やお金や友情といった自分の人生の資産を”消費”ではなくて、自分や環境に”投資”になるような活動の選択肢がもう少しあればなあ、とよく感じました。

そんな意味で、天気さえ良ければすぐに手軽に気持ち良く楽しめるサイクル文化はアリだと思います。
車中心の社会なので、意外と都心部の人よりも足腰弱りやすい地方の人の健康にも寄与します。
スポーツカーには簡単には乗れませんが、フェラーリにも劣らないグッと惚れ込むマシンにまたがれば気分も上々。
自分の身体と、自然と、会話した後のビールは最高です。

でも、自転車文化って愛媛に合うの?

本来ロードバイクはストイックなスポーツです。
ツールドフランスとかも賞金ガツガツではなく、ハングリーさの象徴だった面もある。
それにマシンは高い。何十万もする。
だから実際そんな万人が楽しむ文化ではない。

でもそこまででなくとも、景色を楽しんだり、身体を使ってどんどん進むのを楽しんだり、と自転車でできることを楽しむ地域は国内外にあります。

今住んでいる沖縄はというと、割とサイクル文化は成り立っています。
南国だからのんびりとしたゆるいところなので、ストイックな文化が育つようなところではない。
それに今回の愛媛のような整えられたサイクリングロードはほぼない。
本土や北海道のコースのような心臓破りの坂がいっぱいあるわけでもなく、そんなに険しい道ではない。

ツールドおきなわ でも、青い空と海を見てたら、なんか走りたくなる。
だから、初心者でもちょっとかっこつけるだけで、その気になって、風を感じることができる。
一年中温暖なので、走りやすい。
それにみんなイベント好き。年に一度のツールドおきなわに出たくなる。

そういう、環境が味方しているといえるのではと思います。

南予地方はどうだろうか。

佐田岬半島は気持ちいいと思う。
でもどっちかといえばストイックな自分を責めてその達成感としての絶景というようなコースが多いような気がするので、自ずから根付いていく感じではありません。
三間や吉田の峠を超えていても、鬼ケ城をひぃひぃ言って登っていても、”攻める”楽しさはあってもみんなができるものではない。

人口を増やすにはエントリークラスに親しみやすいものでと考えると、ちょっと厳しいのではないかなあと思います。
県民性も基本まじめなので、かっこつけて風を切る目立つ行動はまだまだ馴染まないかもしれません。

こういっときながらですが前述の通り自転車文化はなんとか育ってほしいというところです。

自転車文化を開拓するようなアプローチがあってもいいのでは

今回のサイトはいかにも真面目な愛媛とマイクロソフトが組みました、というようなもので非常にアレです。
トップページはWordで作ったんでしょうか。

地図の機能とかは便利そうに見えますが、あ、こんなのがあるんだというので終わりです。
現地を訪れた人に投稿してもらうって、帰ってきてからいちいちする人今はいません。何のためにするの。

愛媛マルゴト自転車道のコースガイド

なんで子ページは左寄せなんだろうね

スマフォで見やすくて移動先で使ったりシェアしたりといった行動をターゲットにしたものでもないし、行政主導で作りました感がちょっと残念で、「自転車乗っている人が楽しむこと」をもうちょっと意識した企画としてもいいのではと思います。

山も海もあり、一見さんでは痛い目に合うコースも少なくないので、オンラインでタイムトライアルできるようなiPhoneアプリとか運用して、まずは文化を盛り上げてくれそうな層を掘り起こしたりした方がいいんじゃないでしょうか。

そしてそこに集まってきた二次層を盛り上げるようなツールやイベントが続いてくるのではと思います。

むしろいったん波ができれば、そこそこの自転車好きが唸るコースはあるわけなので、ある程度育っていくのではとも思います。

自転車は遠くにいけない〜地元密着型文化や観光にあってる

自動車ほどの移動距離は持てません。速度も出ません(出せるけど)。

だから、その土地をよく見たり感じたりしやすい。

その土地にいなければいけない人、そこに住むと決めた人がその土地や環境に慣れて愛するためにも、いろんな”気づき”を生む良いアクティビティになります。
ゆえに国内外各地で根付いていって、発展していっているんでしょう。

行政のやることで地元へはすぐに波及しないかもしれないけど、しまなみ周辺から暖めていって文化を築いていくことができるのではと感じます。

ぜひぜひ一過性の地域振興対策で終わるのではなくて、そこに住む人たちに愛されていく文化となっていくといいなあと思った沖縄在住、元愛媛人でした。

Yossio Nagata
Web Director / designer

沖縄県与那原町在住。ICT企業のウェブ部門担当、事業会社のインハウスデザイナーを経験。2012年より独立し、企業のウェブ制作、運用を専門に展開。 ロードバイクと山とコーヒーにこだわりを持つ。